主な著書・出版物

本著は「フェイク(嘘)とどう闘うか」の実践的な指南書ではない。これは真理とは何かを問う認識論や哲学の分野に属する、永井潔自身にとっての「真理入門」の書である。画家でもある彼が芸術(とりわけ「芸術的真実」)とは何かを明らかにするために、それを含み対向する「真理」そのものを明らかにしようとした挑戦の論考である。 (北野輝「永井潔"真理論入門"への誘い」(巻頭解題)より)

新日本出版社 1970年 永井の主著の一つ。出版後、活発な論争を生んだ本書は、反映論による芸術論の新たな展開の試みとして注目される。著者は、芸術を労働からの分化・派生として、つまり、労働→造形的実践→形象的認識の分化・形成の発展的過程においてとらえ、形象を形(表現手段)による象(対象)のはあくとみなす。本書は「客観美」批判、芸術の呪術起源説の批判、芸術の表現=実践説の批判などの重要な論議を含む。

新興出版社 1972年 不健康なもの、非理性的衝動的なものに人間が浸蝕されつつある現代。今こそ人間は真に美的なものを求めている。そして、芸術創造、芸術運動のありかたに関しては、個々の芸術家に解答を迫っていると言えよう。 日本美術会の中心的メンバーとして、創作・理論の両面にわたって活躍した著者が、“さきに出版した『芸術論ノート』のそのまたノート”と自評した一つのラフ・スケッチであり、エッセンスである。

新日本出版社 1978年 本来建前の中にしかリアリティーは生じないといってよいのではないか? 現代文化において実感喪失が云々されているのは、人々が本音のみを追い求めて建前を軽蔑するようになった風潮と密接に結びついているのではないか? 「芸術と自由」について、あえて「建前主義」を貫こうと試みた論考。

大月書店(国民文庫) 1974年 文化の民族性とは? 芸術の多様性の問題、芸術創造と鑑賞、芸術におけるリアリズムの問題等を解明することをつうじて、日本の芸術の伝統をうけつぎ、民主的でゆたかな芸術を創造する今日的課題をあきらかにする。
